写真を撮るということ

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私はどちらかというと写真をよく撮る方ではなかった。素敵だな、と思うものからは目が離せなくなって、そのままじっと見つめて自分の中に残しておくのが好きだった。

だけど、当たり前にあったものが形をなくしてしまう。

実家が解体される前日、がらんとしてしまった毎日暮らした場所を、沢山写真に撮った。

 

私がこの家に来たのは小学三年生の頃、今から10年以上前のことになる。それより前にも「おじいちゃんち」としてここへは来ていて、この家は私よりも長生きだ。そんな家が、ついに建て替えをすることになった。

 

それぞれに思い出は詰まっているけれど、印象に残っているのは、やっぱりキッチンだと思う。毎日、私は祖母の作るごはんをそれは楽しみにして、今日はなんだろうなと考えながら学校から帰ってくる。そしてキッチンを覗いて、「美味しそうだね」と声を掛けると、祖母は「美味しそうだね、じゃなくて美味しいのよ」と言う。それがお決まりの会話だった。

私はおなかが空いて仕方がなくて、いただきますをすると夢中になって食べて、それを家族が笑って見ていた。叱られて泣きながらごはんを食べたこともあったな。

 

思い出はなくならないけれど、当たり前のようにあったものがなくなってしまうのは、なんとなくさみしい。

そこで暮らした日々のことを、家族との会話や、一人ひとりの表情を、忘れたくない。

 

 

いつかは離れてしまう、なくなってしまうものたちとの、忘れたくない日のことを、私は写真に撮りたい。